オランダの歴史的都市ドルドレヒトを訪ねて(2005.11.27)

大阪大学大学院国際公共政策研究科・畑田家住宅活用保存会正会員  長島美由紀

オランダは建築や都市計画に関する政策の一環として、歴史的(記念)建造物(モニュメント)の保存と修復に力を入れている国である。1988年に歴史的(記念)建造物法(Historic Buildings and Ancient Monuments Act)が制定された。現在、オランダ国内において歴史的建造物に指定されている建物は市庁舎、教会、美術館を含む5万5000点以上に及ぶ。その中で、ロータリー財団奨学金を受けて留学中に現地でお世話になったホストロータリアンの生まれ故郷であるドルドレヒトを訪れた。オランダの最も古い都市と呼ばれているドルドレヒトは、オランダ南西部の旧マース川を含む複数の川に囲まれた歴史の古い港町である。古くから欧州で船舶の交通量が最も多い港であり、オランダのみならず、欧州中からやってきた船舶が停泊している。街の運河沿いには伝統的な住宅が建ち並び、歴史の深さを感じ取ることができる。この街では旧教会をはじめとした約1000点の建物が歴史的建造物として指定されている。ドルドレヒト美術館には主にドルドレヒト出身の画家による17世紀から20世紀初頭のオランダを描いた絵画が多数展示されている。特に当時のドルドレヒトの町並みを描いた絵画が印象的である。それらの絵を現在の風景と比較してみると、昔の風景がほとんど変わらずに保存されていることが分かる。例えば、1886年にJohan Barthold Jongkingによって描かれたドルドレヒトの川沿いの風景画(1)の中の高くそびえ立つ数本の木、鐘がある高い時計台、そしてカフェ等の建物は私が実際に見た風景(写真参照)とほとんど同じで、まるで当時のドルドレヒトにタイムスリップした感じがした。

オランダ全土で毎年、9月の第二週の週末に開催されるオープン・モニュメント・デーでは普段は非公開の歴史的建造物が一般公開される。入場料は無料。毎年テーマが決められ、今年は『宗教的遺産』がテーマであり、教会等を中心とした建造物が公開された。公開される場所の情報は各町の観光案内所で入手できるようになっている。過去に、郊外の小さな村にある建物や酪農・農家が公開されたときには、多くの見物客が訪問したということであった。

(1)Johan Barthold Jongkingによって描かれた絵は下記のドルドレヒト美術館のHPで見ることができます。http://cms.dordrecht.nl/dordt?nav=wqbjEsHaKpPGbCAofB


本稿は、畑田家住宅活用保存会ホームページ(http://culture-h.jp/hatadake-katsuyo/index.html)より許可を得て転載したものである。


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